「みんなのきざし 2018」開催レポート

2018年8月20日、特定非営利活動法人「きざし」が主催する第二回「みんなのきざし」。

今年は、福島県にある児童養護施設「森の風学園」の児童11名が参加してくれました。東京キッザニアで職業体験をし、豊洲公園で遊び、東京駅近くの鍛冶橋バス停まで、ボランティアのみなさんと共に過ごす一日です。

児童養護施設の子どもたちは、さまざまな事情から親と共に暮らすことができません。日ごろ、施設の中では、一人の職員の方が、何人もの子どもたちと対応しています。引っ込み思案の子どもの中には、自分の要望を言えず、甘えることができません。「みんなのきざし」の特徴は、一人の子どもに一人の大人が終日、付き添うこと。この一日は、思いきり大人に甘えて、これまでにない職業を知り、将来のことを考えるきっかけを作るために始めたイベントです。

朝、到着!パートナーとご対面

「昨夜からワクワクしていて、バスの中でも眠れずにいたんですよ」

と、現地から付き添ってきた「きざし」スタッフ。バスを降り立った子どもたちは、緊張しながらも、嬉しそう。まずは、今日一日、パートナーとなる大人を紹介されます。躊躇なく手を握る子もいれば、人見知りをして泣き出してしまう子も。まずは手を繋いで、キッザニア東京まで向かいます。初めてのエスカレーターに、大人の手につかまりながら乗り込むと、次第に表情が明るくなっていきます。人見知りで泣いていた子も、気づけばパートナーの方の手にしっかり掴まっていました。

 

  キッザニア東京で、職業?体験!

キッザニア東京では、さまざまな職業を体験することができます。「車に乗りたい!」「警察官になりたい!」と、はっきり主張できる子は、すぐにそのブースへ。しかし、なかなか自分のやりたいことが言い出せない子も。年中さんの男の子は、同じ施設のしっかり者の小学三年生のお姉さんに連れられて、ガソリンスタンドを体験。小さな体で一生懸命、車の窓を拭く姿に、担当のパートナーの女性が感動してしまう場面も。その後、今度は一人で、石鹸工場の体験も。数時間のうちに成長していく姿を目の当たりにしました。

ある小学一年生の女の子は、施設内にあるエレベーターに夢中。

「お仕事よりも、エレベーターが楽しいみたいで」と、苦笑しながら、10回以上、エレベーターに一緒に乗っていたパートナーの男性もいました。

施設内を何周もしながら、チャレンジするものが見つけられない小学二年生の女の子。

「あと一歩、思い切ることができない子なんです…」と、施設職員の方。それでも根気よく、おしゃべりをしてくれたボランティアの男性のおかげで、ソフトクリームショップの店員さんを体験。それを皮切りに、今度はコスメショップでメイクアップスタッフを体験して、終了した時には、晴れ晴れとした顔をしていました。

子どもたちは、自分ががんばっている姿を見てくれるパートナーの姿を見つけると、満面の笑みで手を振ってきます。体験したことを一生懸命、話す姿は、本当に嬉しそう。見守られている中で、新しいことに挑戦できた体験が、これからの子どもたちの背中を押す力になればと思います。

 

 駄菓子屋さんでお買い物体験

キッザニア東京を出て、同じららぽーと豊洲内にある「だがし夢や」さんへ。

「500円のお小遣いで、お買い物をしてください」というと、買い物かごを片手に、パートナーと協力しながら、お菓子を選びます。

「これ、55円だって。あといくら買える?」「このお菓子、どんな味?」と、話し合っている姿は、大人も子どもも楽しそう。自分でしっかりレジで支払いをして、そのお菓子を持って、一路、豊洲公園へ。公園では、木陰でお菓子を食べたり、綱引きをしたり…。

「何が一番、楽しかった?」「どんなお仕事をしてみたいと思った?」「そのお菓子、美味しい?」と、問いかけるパートナーに、自分の気持ちを話す子どもたち。そして、ほんの少し離れると、すぐに「ねえ、〇〇さんは?」と、パートナーを探します。いつの間にか、お互いの間に絆ができているのが感じられました。

ゆりかもめで大興奮!山手線でびっくり!

豊洲から、切符を買ってゆりかもめに。

「電車に乗るの?バスじゃないの?」

最初は怪訝な顔をしていた子どもたちですが、ゆりかもめの先頭車両に乗り込むと、その視界にびっくり。東京ビッグサイトやお台場のフジテレビ、ガンダムに、レインボーブリッジ。東京タワーやスカイツリーも見える景色に、

「何、あれ?」「海の上を走っているの?」「こんな電車初めて」と、大興奮。

途中、外国人観光客が乗り込んでくると、一人の小学四年生の男の子が「どこの人なの?」と声を掛けます。英語のできるボランティアスタッフが、通訳をするとイタリアからの観光客だと分かりました。一緒に車窓の景色を楽しみ、降りていく彼らに「チャオ!」とあいさつ。思いがけない国際交流もできました。

新橋から、有楽町までは、世界でも有名なラッシュの山手線へ。

「しっかり、パートナーの手を繋いでくださいね」

ぎゅっと力を込めて手を握り、満員の電車に乗り込みます。

「すごかった」「あんなに人が乗るの?バスの方がいいね」「ぎゅうぎゅうで面白かった」

それぞれに感想を言いながら、有楽町駅から、鍛冶橋バス停まで歩きます。

 

お別れの時…

いよいよお別れの時。

「ここでお別れです。みなさんに挨拶をしてバスに乗りましょう」

施設職員の方の声に、ぐずる子も。年中さんの女の子は、パートナーの女性の膝に乗ったまま、降りようとしません。小学二年生の女の子は、パートナーはもちろん、他のスタッフたちにもハグをして回ります。もう、目も合わせずにバスに乗り込む子も。バスから、パートナーの姿を探し、一生懸命に手を振る子どもたちの姿に、ボランティアスタッフたちは、思いきり手を振り返しました。

小学校六年生の女の子は、バスに乗り込むなり大号泣。色んな思いが彼女の中で交錯していたのかもしれません。

「彼女が泣き止むまで、他の子どもたちもみんな、静かにしていたんですよ」

と、帰途、同行したスタッフ。

お別れが悲しいということは、それだけ楽しんでもらえたということなのでしょう。

最初は緊張も感じさせた子どもたちが、楽しさを表現し、笑顔を見せてくれる。引っ込み思案の子どもたちが、新しいことにチャレンジし、その楽しさを話してくれる。

この一日が、子どもたちにとって、一歩を踏み出すきざしになってくれることを祈ります。

今年も無事に開催することができました。ご支援いただきました多くの皆様、本当にありがとうございました。

 

平成30年8月31日

特定非営利活動法人きざし

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